今期は「青年部リレー」と題して月一回、ブロック役員のコラムを掲載します。
(毎月第2日曜頃更新予定)
第5回 「澗水湛えて藍の如し (かんすいたたえてあいのごとし)」
五月に入り港から吹いてくる爽やかな浜風が頬をなで、対馬の山々は目にも鮮やかな新芽が生き生きと茂り、リアス海岸で形成された浅茅湾は碧く、渓流のせせらぎが耳に心地よい季節となり観光客を喜ばせてくれています。
禅の書物・碧巌録にこんなお話が出てきます。ある僧が問います。
「大龍和尚様、私たちの肉体はいずれ滅びてしまうが永遠不滅の生命はどこにありますか?」と。大龍和尚は、「山の花々は開いて錦を織り成したようであり、谷間を流れる川は青々としてまるで藍を流したようである。」と答えます。
生きとし生けるものは時の流れとともに移り変わり無常でありいつかは消えてなくなってしまいます。私たちはこの偉大なる自然の大いなる命の中で生きているのではなく生かされているのだと自覚し感謝する。寒いときは寒い、暑いときは暑い、悲しいときは涙を流し、嬉しいときは喜び、そのままあるがままの素直な心持ちでいるならば「澗水湛えて藍の如し」という素晴らしい風光を心から楽しむことができるのではないでしょうか。これから次第に天候が変化してきます。時節に身を任せながら8月に開催されるブロック研修会に向けて全力で準備をすすめていきたいと思います。
夏真っ盛りのキラキラした対馬に乞うご期待。
2023年5月 ブロック長 田中 節竜
第4回 「和合の茶会」
先週のお稽古のときにかかっていた色紙「弄花香満衣」。
お水屋で準備をしているときにうぐいすの鳴き声も聞こえて。
なんとも、「春」。
お稽古のひとときは日常の喧騒を離れた心研ぎ澄まる時間だなと
改めて感じる今日この頃です。
沖縄は年中ハイビスカスが咲く南国。
床に飾るお花も南国を感じるものが多くみられます。
今日の研究会では早くもあやめ(オクラレルカ)が生けられていました。
3月下旬から4月上旬は一般的には桜の季節!と思いますが、
沖縄の桜は1月下旬がピークなので、この時期はお茶道具で桜を愛でている私です。
さて、沖縄・奄美大島・鹿児島「和合の茶会」。
皆さんはご参加されたことがありますでしょうか。
大宗匠の「一盌からピースフルネスを」の理念のもと、この三地域の歴史的・文化的なつながりを踏まえながら、世界に向けて平和と交流の輪を拡げようとスタートした茶会です。
昨年はコロナ禍で幾分か縮小傾向でしたが、沖縄で3年ぶりに開催されました。
なんといっても、大宗匠のお元気なお姿を拝見することができたことが何よりもうれしいことでした。
支部席は「ちむどんどん席」※ちむどんどん=胸が高鳴る、
青年部・学茶席は「いちゃりばちょーでー席」※いちゃりばちょーでー=一度会えば兄弟 と名付けて支部青年部学茶と一体になって取り組みました。
いちゃりばちょーでー席では、入り口に飾った地球儀へ、平和の使者である鳩の折り紙をご来場くださった皆様に平和を祈念して貼っていただき、平和祈念堂での献茶式の後に奉納させていただきました。
今年の和合の茶会は奄美大島での開催です。
奄美にはどんなお花が咲いているのかな、沖縄と同じかしら・・と思いを馳せながら、いまから”ちむどんどん”しています!
2023年4月 副ブロック長 塩釜 明子
第3回 「魁」
こんにちは。佐賀青年部の出口です。
周年行事を計画されている青年部も多いことと思います。
佐賀青年部は5年前に50周年記念大会を開催させていただきました。
明治維新から150年という節目の年に開催されたこともあり、私たちも先人たちの精神を受け継ぎ、どんな時も最初の一歩を踏み出すことを恐れず進んでいきたいという想いで青年部席のテーマを『魁』としました。
『魁』を象徴するお道具として「肥前びーどろ」でお棗を制作していただきました。
「肥前びーどろ」は佐賀藩の先進的な取り組みの一つです。
佐賀の礎を築いたと言われる 十代藩主鍋島直正公が、嘉永五年に精煉方(今で言う理化学研究所)を設置したのが始まりで、当時では珍しいガラス窯が築かれ、主に科学実験のためのビーカーやフラスコが作られました。
激動の時代、佐賀には日本を牽引する志と技術がありました。
お茶、温泉、焼物、肥前びーどろ!
これで今日からアナタも佐賀通ですね♪
2023年3月 副ブロック長 出口 優子
第2回「自身の立場を忘れずに、守るべきことは守り、若さにまかせてやってみる。」
今月のコラムを担当します野田です。
前置きとして内容がコラムになっていなかもしれませんこと、ご容赦ください。
大牟田では今年10月7日(土)、8日(日)に大牟田支部創立75周年・青年部65周年記念大会を開催いたします。
大牟田青年部の創立は昭和33年、初代部長でもある故・江上宗敏先生の一つの思いにより成されました。それは江上先生が大牟田青年部十周年記念大会記念誌に寄稿された文章の冒頭にあります。
「裏千家茶道を学ぶ者、然も近郊に住み常に研究会、茶会と顔を合わせ、又同席し乍ら名前も知らず話し合う機会もない不自然さ、お互いに話し位したい、出来れば名前も知りたい」
考え方は人それぞれなので、私は一人で楽しみたいんだ、という方もいらっしゃることと思います。見ず知らずの人にいきなり話しかけるなんて、シャイな青年茶人にはハードルが高いことでしょう。ですが青年部ではどこの社中であろうが、年が違おうが、研究会でも茶会でも話しかけてくれる先輩がいて、会員の顔と名前を覚えるとそれが当たり前のように言葉を交わす機会が増えます。私も年とともに話しかける側に変わりました(たぶん)。そのつながりは、狭かった世界を広げてくれました。視点の違う考えを知り、知識を増やす機会となりました。九州内の青年部、全国の青年部会員との交流がそれを幾重にも広げてくれたことは間違いありません。良いことも、そうでないこともありますが、私には刺激となり、何よりも勉強になっています。おそらく青年部に入会することがなければ知り得ないものだったでしょう。
自青年部内の交流だけでも楽しいものです。ですが、一歩踏み出し、他青年部のお茶会やブロック研修会に参加すれば、様々な出会いが待っています。ふと隣り合った人と、お花が綺麗ですね、なんて些細な一言で交流が始まるかもしれませんよ。
江上先生の文章にはこうもあります。
「何れにせよ青年部は親支部の下部組織であり独走することをさけたい。然し乍ら青年部としての誇りを捨てる事なく若い者が若い内でなければ出来ない事はやるべしと考える」
我々は裏千家という組織の一員です。自身の立場を忘れずに、守るべきことは守り、若さにまかせてやってみる。どちらも大事なことだと思います。
そんなはじめの一歩を、ぜひ大牟田支部・青年部の周年行事で踏み出してみてください。お待ちしています。
偉そうなことを並べて御目汚ししました。お許しいただき、ご笑納ください。
2023年2月 副ブロック長 野田 智美
第1回 「彩凰舞丹霄(さいおうたんしょうにまう)」
新年おめでとうございます。
今期ブロック長を務めます対馬青年部の田中節竜と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
今期よりホームページ上で「青年部リレー」と題して月一回、ブロック役員がコラムを掲載します。
そこで第一回目は私が選んだ禅語です。
輝かしい新春に相応しい語として選んだのは
「彩凰舞丹霄」 彩凰、丹霄(たんしょう)に舞う です。
五色の美しい彩りの翼をもつ鳳凰が雲一つない朝焼け、夕焼けの真っ赤な大空を悠々と舞っているという意味です。
鳳凰は、聖王(すぐれた徳があり立派な政治をする君主)が世に出るとそれに応じて現れるといわれる想像上のめでたい鳥で、これから明るい世の中が開けてくる兆しとされています。このことからよく新年のお茶会やめでたい席にこの語は用いられます。皆様のお住まいの各地域では初釜が催されたことでしょう。
しかしながら新年を迎えてもなお、国内情勢はもとよりウクライナ戦争の長期化や周辺国をはじめとする世界情勢は益々先行きが不透明となり混沌としています。現実ではなかなか鳳凰が現れる兆しがありません。
そういう時だからこそ、私たちは茶の湯の心を見つめ直し、今一度、一人びとりが自分は素晴らしい世の中にいるのだという、「ありがとう」と「おかげさま」の気持ちを持てば、おのずと平和な明るい世の中が開けていくのではないでしょうか。
いよいよ新九州ブロックが始動します。今後ともよろしくお願い致します。
2023年1月 ブロック長 田中 節竜